大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)3054号 判決

しかしながら起訴せられない犯罪事実に関する被害届、被害者の供述調書、被告人の供述調書の記載と雖も、起訴に係る犯罪事実と関連あり、犯罪事実又はその情状を立証する資料となり得るものはこれを証拠とするに差支がないものと解すべきであつて、記録を精査すると、前記の起訴せられなかつた横領事実は、被告人が被害者芳川昌夫方に雇われている間に犯した起訴に係る横領並に窃盜の事実と同一環境において行われたものであつて被告人の本件犯行の情状を立証するに足るものと考えられるから、原審が本件において、その証拠調をしたことに何等の違法もない。

尤も、右の起訴せられなかつた横領事実は被告人の不利な情状であり、右横領事実に関する検察官の証拠の取調請求は前記各書類の取調の請求によつて行われたのであるから、被告人及び弁護人は刑事訴訟法第三百二十条乃至第三百二十三条によつて証拠調に異議の申立をする機会があり、その証拠調を阻止できたものもあつたのであるが、前記の如く、被告人及び弁護人においていずれも証拠とすることに同意したものであるから、前記各書類は適法な証拠能力を具備したものであり、これを排除決定すべき理由なく、従つて、原審がこれを判決に証拠として挙示したことは正当である。

所論の刑事訴訟法第二百九十六条の規定は検察官が証拠とすることができず、又はその取調を請求する意思のない資料に基いて裁判官に事件について偏見又は予断を生ぜしめる虞のある事項の陳述を禁止した規定で、前記のように証拠とすることができ、証拠として取調を請求する意思のあつた資料に基いて証拠調の冒頭陳述が行われたと認められる本件について、その適用がなく、所論はすべて失当である。

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